住み慣れてきた、こじんまりとした家。

 郊外とはいえセントラルには珍しい、全て木材でできた家。
 リゼンブールにあった家のようで、少しでも兄さんにいい影響を与えられればと思って選んだ家だった。

 扉を開けて、リビングを抜けて、階段を駆け上る。
 二階の角の部屋の前で立ち止まる。息を整えて、ゆっくりとノブを回した。

 「ただいま」





 コンフィデンス リエゾン  04




 
 ベッドとサイドデスク代わりの机の他は何も置いていない、殺風景な部屋。ただし、床や壁は綺麗に掃除されている。どれもが木でできていて、使い込まれた温かみが滲んでいた。
 開け放った窓の枠に座り、パジャマ代わりのラフな格好で、結い上げたポニーテールを風になびかせていたのが、エドワードだった。

 「兄さん、危ないよ」
 アルフォンスが注意するが、聞こえた素振りはない。ここから見えるセントラルの中心部の方に視線を向けたまま、振り返りもしない。
 アルフォンスは苦笑して、窓際に寄った。
 そっと手を伸ばす。

 「調子はどう? 兄さん」
 すると、エドワードがゆっくりとアルフォンスに視線を向ける。
 そして微笑む。幸せそうに、純粋に、ただにこりと笑む。
 その笑顔が、彼の過去を知る人間にとってどれだけ違和感があるものか口にする者はいない。
 アルフォンスはエドワードの首に腕を回して、ぎゅうっときつく抱き締めた。エドワードの腕は下がったままだ。この行為を何度施しても、抱き締め返すこともない。
 それでもアルフォンスは満足だった。

 その様子をロスとブロッシュはただ見守っていた。










 「すみません。今お茶淹れますね」
 「い、いえ。お構いなく」
 二人の遠慮を聞き流しながらヤカンを火にかけて、戸棚からポットやカップを取り出す。
 お茶とお菓子を出したところで、アルフォンスが二階に向かう。思い出したように、首だけを残して言った。
 「ボク着替えてきます。あの、家まで送っていただいてありがとうございました」


 アルフォンスはすぐに戻ってきた。着替えは軍人の早さだ。
 三つ編みを後ろの下一つに結び直し、黒の中着にシャツを羽織っている。どこから見ても年相応。学生といった姿だ。
 足音は二つあった。
 アルフォンスの後ろから、もう一人がリビングに入ってくる。

 「兄さんも飲む?」
 思慮するような間の後、こくりと頷いたのを見て、もう一つカップを用意する。
 それを見ていたロスとブロッシュが感心する。
 「随分よくなってるようですね」
 「見違えたよ」
 二人ともが喜んで、笑う。





 「それでは私達は一度司令部に戻った後、帰宅します」
 「では、また明日。よろしくお願いします」
 「これから病院だね」
 「はい。そう遠くないし、歩いた方が運動にもなりますから」

 エドワードを玄関に待たせて、車に乗り込んだ二人にアルフォンスが挨拶をする。
 アルフォンスの護衛を最大任務としている二人は、アルフォンスが必要ないといえば仕事はなしになり、今日のような日は早上がりということになる。

 「それでは、何かあったらすぐに呼びつけてくださいよ」
 「ありがとうございます」
 病院にまで着いて行った方がいいのでは、という心配性気味なロスにブロッシュと二人で苦笑する。


 軍用車を送り出して、エドワードの手を取る。
 「ノックス先生のとこに行こっか」




 

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予告のセリフ。
 予定では私服でしたが、話の進行上軍服ということで。