03





 そこにいたのは紛れもなく彼らで。

 エドワードとアルフォンスがソファに並んで座り、互いに抱えているバスケットの中身を見せ合っていた。側らには書類と格闘しながらも微笑んでいるホークアイが。
 やはりあれは嘘だったのか。私を騙す策略だったのか。


 何もかもどうでもよかった。
 嘘でしたといわれればそれまでなのに、一度そうだと納得してしまったためかとても嘘だったと思えなかった。まるで生き返ってくれたかのような。
 突然現れた私に半ば呆然としている兄弟に駆け寄り、膝を着くと問答無用で抱き締めた。
 その拍子に彼らは手にしていたバスケットを取り落とし、飴玉やらクッキーの入った小さな袋やらが床にぶちまけられてしまった。





 「……た、たた大佐?」
 「大佐、ボク冷たいですから」
 アルフォンスがそう言って、彼に回していた腕を兄に譲る。結果、私はエドワードだけを腕に収めることになる。

 「……よかった。嘘だったんだな。全員減給だ」
 そう言い切って、振り返る。
 「中尉! 悪ふざけが過ぎるぞ。一体誰だ。発案者は」

 ホークアイが珍しくきょとんとしている。しかしそれは一瞬のことで、すぐに眉がひそめられた。
 「お言葉ですが、私は何かをした覚えはありません。それに全員が減給とは」
 「さっきのことだ。私が菓子でも用意するかと言ったら君は彼らが、彼らが……」
 ああ、まずい。きっと今私は涙目になっている。何か情けないぞ。たかがいたずらで。


 「死んだと」


 部屋が一瞬にして静まり返った。
 エドワードは身体を硬直させて身じろぎ一つできずにいた。

 「大佐。私はどこでそんな縁起の悪い会話を?」
 「ここでだよ。ハボックとすれ違いに君は出て行ったじゃないか」
 「ごめんなさいね、エドワード君、アルフォンス君。この人、打ち所が悪かったみたいだわ」
 にこりと笑顔で言うと、兄弟はいいえと首を振った。



 「中尉、大佐ってエントランスの階段落ちたんじゃなかったんですか?」
 アルフォンスがホークアイに尋ねて、彼女はそうだと頷いた。
 「エントランス? 私が落ちたのは中庭の手前のだろう。ハボックまであんな顔で怒鳴るから私は間に受けてしまって。中庭に行ったらブレダ達がそろってすすり泣きなんてしていて。それで驚いて後ずさったら階段を踏み外して」
 いや、それにしても君達があんなに演技派だとは知らなかったよ。

 思い出したらまた涙腺が緩みかけた。何とか堪えようとして、エドワードを強く抱き締めた。
 彼は私の様子に酷く驚いているようだったが、長男気質が勝ったのか、そろそろと髪に触れてきた。





 「アル、お前ブレダ少尉たちのとこに行ってこいよ。カボチャに苦戦してるだろうからさ。子供の前で情けない姿見せるなんて、いくらこいつでも正気に戻ったら恥ずかしいだろうし」
 「う、うん」
 「では、私はドクターの所に行ってきます」





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