途中入学の試験結果は驚くほどすぐに出た。
 しかも、通達で連絡するといっていたのにわざわざ男が二人、ロイを訪ねた。





 その後  03





 五十代くらいだろう人のよさそうな男達が軍に赴いたのは、エルリック兄弟が未成年ということもあり、引き続きロイが後見人になっていたためだった。

 ロイは結果はよほどのことがない限り、不合格にはならないと思っていた。顔見知りの教授にも話を通しておいたし。
 それに、あれだけの人材を欲しがらないはずがないだろう。
 学校が活躍がすれば、次の入学者獲得にも繋がる。集まる人間の質も上がるというものだ。





 ……もちろん二人とも合格。あっけにとられたのはその後だ。
 アルフォンスは聞いていた通り高校(ハイスクール)の入学試験を受けたのだが、エドワードは……


 「……その、エドワード君は自主研究が行える大学(ユニヴァーシティ)の試験を受けさせてほしい、と。飛び級は認められていないわけではありませんが、その……小学校の卒業証明もないので……失礼ですが学力のレベルが分かりませんでしたし……」
 客室。ロイの前に座る学校関係者の一人が戸惑った様子で言った。言ったのは一人だった。しかし、もう一方の男も同じような表情をしていた。


 ロイは嘆息した。
 何かやるのでは、と思わなかったわけではないが。この学校は小学校から大学院まで備えている、いわゆる一貫型だった。
 確かに、エドワードもアルフォンスも小学校をきちんとは出ていない。機械鎧の手術とリハビリ、そして卒業前に村を出て旅を始めたからだ。
 ほとんどの場合、知識人でもなければ学歴などというものは特に意味を成さない。リゼンブールのような田舎では進学をするものなど多分いないだろうし、それぞれの生業があるからそれで構わないのだ。


 「それでも、とりあえずは『二人とも合格』なのですね」
 勝手なことを、申し訳ありません、と一応形だけの挨拶をする。始めからこれでは頭も痛くなる。
 二人の男が恐縮して、いいえいいえと否定する。
 「とんでもございません。『学びたいものは拒まず』が我が校のモットーですから。それでですね。試験結果からエドワード君は通常より二年飛び級、ということになります」





 そこから話は本題へと入る。
 大学と高校は通りを挟んで向かい合っていること。
 共に来週から転入生、という形で通学できること。
 どちらも優秀生の特別待遇として学費の全額免除。エドワードに関しては理解済み分野の単位の取得、すぐに自主研究を始められる許可が与えられること……
 最後に寮は空きがなく、後見人の自宅が近いということもあり、入寮はできないこと。できれば家から通学してほしいこと。
 それからロイが二、三質問をして、兄弟に伝えておきます、と言った。

 大学でも高校でも、逸材の入学に喜んでいるらしかった。ロイも最早過去形ではあるが、部下を手放しで誉められれば気分が悪いはずがない。
 受験までは一週間と余裕がなかった。それでこの結果とは。国家資格を取った時同様、いやそれ以上の猛勉強をしたのだろう。無自覚の努力家の姿が目に浮かぶ。

 「それでは、お二人には期待しております」





 客人が帰ってもなかなか出てこない上司に、リザが一言断ってドアを開けると、ロイはまだソファに座っていた。用意された紅茶はすっかり空になっている。
 そのロイ本人は窓の外を眺めているようだ。

 「どうかなされたのですか? 試験はパスできたのでしょう?」
 カップを重ねながら、リザが言う。
 ロイがそれに応じる。
 「ああ。二人ともたいしたものだ。特待生で学費は免除。……エドワードは二つ飛び級できるそうだ」
 「お祝い、いつがいいでしょうね。こういう時しか何かしてあげられませんから」
 わずかに微笑したリザに、ロイはため息をついた。
 「エドワードは無理をいって大学の試験を受けたのだよ。私に相談もなしに……」
 「エドワード君らしいですね」

 まったく、と言いながらも内心喜んでいるだろうロイに、リザはスケジュールに空きのある日付けを口にしていく。






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