ふと目が覚めた。瞼をこすって、その原因を見つける。
 ほんの少し開けていたドアから淡い光が洩れている。「彼」に気付かれないように閉めきらずにいたのだ。

 今まで見て見ぬふりをしてきた。
 でももう限界だ。きっと「彼」は気付いてないのだろう。オレはぐーすかと寝ているとでも思っているのだろう。
 そんなに白状だとは自認していない。
 そっとベッドを抜け出して、向かうのはキッチン。水の音がする。





 明日は





 「あんた、いい加減にしろよな」
 オレの声で振り返ると、珍しく驚いたような顔をした。手には水の入ったコップと、錠剤。

 「起こしてしまったか?」
 すぐに表情をいつも通りに作るけど、今日はごまかされてやらない。そう決めていた。





 エドワードは険しい目つきで一歩踏み入れた。
 ロイは口に含むタイミングを逃して、それを見返す。

 「あのな、これだけ頻繁でオレが気付いてないとでも思ったのか?」
 ぐ、と詰まったような顔で、ロイは押し黙った。
 「…………」
 「…………」
 「飲むんならさっさと飲め。ったく……ほら、さっさと飲め!!」
 急かされて、ロイは水と錠剤を口の中に放り込んだ。甘味も苦味もない固まりが二粒、食道を通り落ちていった。

 「ほら、飲んだら寝る! 明日、っつーか今日も仕事だろ」
 エドワードはロイの腕を掴むとぐいぐいと引っ張っていく。





 ベッドに横になり、薬が効き始めたロイを確認すると、エドワードは満足そうに頷いた。

 「……中尉に告げ口するのか?」
 「最悪な言い方。……このままならね。そのうち胃に穴開くぞ」
 「時既に遅し、かも」
 「うそっ!?」
 心底驚いて目を見開いたエドワードにロイが「冗談だ」と言うと、怒ったのかそっぽを向かれてしまった。

 重い目蓋をこじ開けて、梳かれた金糸に指を絡めた。
 エドワードはその手がぱたりと動かなくなるまでされるがままにしていた。
 その後ロイの腕をシーツに潜り込ませ、風邪をひかないようにと掛け直した。





 漆黒の髪を払うように撫でて、エドワードはその寝顔を眺めた。

 「大丈夫。今より悪いことなんて起きないよ」
 ロイは浅いけれど、規則正しい呼吸を繰り返す。

 「今が、一番酷い時なんだ。……だから、明日は今日よりよくなるよ」

 エドワードは自分に言い聞かせるように呟く。
 まるでそうであってくれと切望するかのように、必死で呟き続けた。





END.