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ジリリリ、とベルが鳴った。
「大佐、エドワード君からですが……」 リザ・ホークアイは厳しい表情で言った。 「分かっているよ。次の定期報告は来なくてもいいと伝えておくから」 ロイ・マスタングは、そう答えて受け取った。
ダイヤル
『…………』 「鋼の? 私だが」 しばらくの無言の後、普段の言動からは考えられないほど弱い声がした。
『……大佐。……あの、さ……』 そのまま、また沈黙に陥ってしまいそうになったのを感じて、ロイが促す。 「次の報告はこちらに来なくて良いよ。もし来る意思があったとしても、もう少し落ち着いてからで構わないから」
『ごめんなさい』 かすれた、痛みを抱えた声だった。 ロイがため息をついた。 「何度も言うが、ヒューズのことに関して君が責任を負う必要は全くない。ヒューズは自分の考えで動いただけだ。君が巻き込んだと思うのは、違う」 『でもっ……』 「正直言って、私はほっとしている」 『?』 「君はそういう姿をなかなか見せないから。大人より大人であろうとしているから……。だから、何ともなくいつものように顔を出したらどこか欠落しているのだと思うところだった」
『……オレ、さ。司令部に行くの嫌じゃないし、みんなにも会いたいと……思うよ。でも、もう少しだけ……待って』 「…………」 『……まだ、多分整理ついてないんだと思うんだ。……母、さんの時みたいに……ヒューズ中佐が『死んだ』ってことが飲み込めないんだ』 「……私でさえ、そうだよ」 『……オレが頼まなければ、話さなければ、ってそればかり考えてる時がある。今さら、どうしようもないのに』
『本当は、大佐にも会いたい。でも、でも……顔見たら、八つ当たりしそうで怖い。黙ってたこととか、嘘ついたこととか。……あんたなりにオレらを気遣ってしたことなのに』
『自分のしたこと直視したくなくて、しっかり見据えられなくて、あんたに泣きつきそうだから。それは絶対嫌だから』
『だから少し、時間ください』
「分かった。しっかり強くなりなさい。……優しすぎると軍(ここ)で生き抜くことはできないから」
チン、と置かれた受話器が音を立てた。 「……大丈夫でしょうか? エドワード君」 執務室のドアの辺りに、リザが立っていた。 「なに、少し時間が要るだけさ。彼は強い。これしきのことで壊れてしまうほどヤワじゃないよ」 ロイは再び万年筆を手に取った。積み重ねられた書類の一枚に目を通し始める。
「理不尽に誰かに当たったり、泣きついたりできるのは子供の特権なのに。……大人になるとただ見苦しいばかりだ」 ロイは誰にともなしに呟いた。
END. |